催眠状態とは、変性意識状態のことです。
変性意識状態とは、普段の意識から離れ、何かに集中して、現実の認識を失っている状態のことです。
現実の認識を失う!?
と考えると、恐ろしい気がするかもしれませんが、
実は私たちは普段から、いつもいくらかは変性意識状態なのです。
例えば小説を夢中になって読んでいる時、
ゲームに夢中になっている時、
なにか、考えごとをしている時、
映画を見ていて、主人公に感情移入している時、
などは、現実を認識していません。
架空の世界に意識が集中しています。
これは、特別なことではなく、私たちが普段から体験していることなのです。
この変性意識状態を(催眠術などにより)意図的に作りだすことを「催眠」と言います。
現代催眠の父と呼ばれ、NLPやSFAの源流になっているミルトン・エリクソン博士が、もっとも広義な催眠の定義をしました。
「昨日の晩ご飯を思い浮かべてください。もし思い浮かべられたら、それは催眠です」
大抵の人は、思い浮かべられると思います。
え? そんな簡単なことなの?
という声が聞こえてきそうですが、これが催眠なのです。
なぜなら、昨日の晩ご飯を思い浮かべている時点では、現実の認識を離れているからなのです。
もっと言うと、
私たちはありのままの現実を正しく認識することは、ほぼほぼ不可能なのです。
私たちには「確証バイアス」という仕組みがあるため、現実を認知するときに、必ず自分オリジナルのフィルターを通してでしか、現実を認知できないからなのです。
キッカケとなる出来事(アクティベイティング・イベント)が起こった時に、
どのように認知し、どのように捉え、どのように解釈し、
そして、それをどのように処理するのかは、人それぞれ違うのです。
例えば、
「朝、顔を洗う」という行動に対して、
Aさんは「爽やかでさっぱりして気持ちの良いこと」と認知します。
Bさんは「めんどくさい。できれば避けたい」と認知します。
このように、同じできごとが起こった時に、人それぞれで解釈が変わるのです。
これは、1日中続きます。
1日中、色んなキッカケがあるのです。
それによって、私たちはいろんな感情を喚起されるのです。
「うれしい」
「悲しい」
「怖い」
「不安」
「幸せ」
「楽しい」
などが、そうです。
そして、感情に振り回されることになってしまうのです。
その他のキッカケの例:
雨が降った時
雪が降った時
雷が落ちた時
寒い朝
真夏の炎天下
お風呂に入る
映画を見る
マンガを読む
小説を読む
などなど、たくさんあります。
同じ小説を読んで、人それぞれの感想が違うのは、確証バイアスというフィルターを通して読んでいるからなのです。
●ここからは余談です。
ありのままの現実を、究極までありのままに見ようとしたのがブッダです。
ブッダは何の修業をしていたかというと、
自分のフィルターを外し、ありのままの世界を見るための修業をしていたのです。
その結果、得られたことを「悟り」と呼ぶのです。
完全に、感情に振り回されないようになると、幸せになります。
苦しさや辛さから解放されるのです。
空観も同じように、苦しみや辛さから解放されることを目的としていますが、そのプロセスにおいてはまったく違っています。
中観では「考えつくして、悟りを得ることにより苦しみから解放される」
空観では「見ないふりをして、苦しみから解放される」
この2つは、大きく違います。
中観では苦しむべきことが無くなっていますが、空観では苦しみが無くなったわけではありません。
ただ、見ないふりをしているだけなのです。
「人間は考える葦である」
哲学者のパスカルが言うように
私たちは、考えることができます。
そのために脳みそがあるのです。
考えつくし、何が正しいのかを見極め、本当の現実を正しく認知することが大切なことなのです。