病名に振り回されない

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病名に振り回されない

精神科や心療内科で「病名」を付けて頂くことがありますが、この“病名”に振り回されすぎるのはよくありません。その理由のひとつにラベリング効果があるからです。
最近では精神科でも病名告知するお医者さんは減ってきました。これだけインターネットが発達し、知りたい情報をピンポイントで一瞬で探せる時代になったのも大きな要因のひとつだと思います。
病名というのはあなたの人格を言い表しているわけではなく、便宜的なカテゴリーに過ぎないのです。


ラベリング効果

ラベリング効果というのは、ラベル通りの人間になって行く傾向性があるということです。人間は意外と暗示に弱く、知らず知らずに「自分はこういう人間だ」ということを自己定義し、無意識的に自分でそのような人間になろうとしてしまうのです。
「自分はうつ病だ」「自分はパニック障害だ」「自分は統合失調症だ」という風に、自分をラベリングすることはとても良くないことだと思います。
「制服が人を作る」という言葉がある通り、人間はラベリングされると、そのラベルに合った振る舞いをしてしまうことが多くあるのです。


悪化する例

こういう話があります。
Aさんという方が精神科に行ったところ「あなたは不安障害ですね」と診断されました。
Aさんは、まさか自分が精神的な病気だとは思っていなかったので、知識はありませんでした。
そこで、家に帰ると早速インターネットで“不安障害”について調べてみました。それはまさしく今までの自分の症状と符合する内容でした。納得したAさんは、さらに情報を検索し、読み込みました。
そうしたところ、今まではなかった症状まで現れ始めたのです。それはネットに書いてある通りの症状でした。例えば、今までは普通にエレベーターに乗れていたのに、インターネットで「エレベーターでパニックになる人」の記事を読んでからエレベーターが何となく怖くなり、やがては乗れなくなってしまったというように、情報に振り回されて症状が悪化していくこともあるのです。

また、別の方は紅茶が飲めなくなってしまいました。「紅茶を飲むとパニックになりやすい」という記事を読んだためです。その情報は、もしかしたらウソ情報かも知れないのにも関わらず、情報に振り回されてしまうこともあるのです。


そもそも、いいかげん

そもそも「病名」はとてもいい加減なもので、医者の判断で付けています。
一応のガイドラインとしては、日本のうつ病の診療ガイドラインがありますが、このガイドラインによるうつ病の定義は、DMS-IV(1994年)の大うつ病障害、単極性うつ病とほぼ同義です。
ちなみにDMSというのは、アメリカ精神医学会によって出版された「精神障害の診断と統計マニュアル」のこと。このDMSの最新版は2013年発行のDMS-5です。日本のガイドラインは少し古いですね。
このガイドラインに従って診断しているはずですが、同じ患者が違う精神科医を受診するたびに、違う診断名を頂くことがあります。

例えば、同じ患者を診た時に
医者(A)「あなたはうつ病ですね」
医者(B)「あなたはうつ病ではありません。双極性障害です」
医者(C)「あなたは統合失調症ですよ」
という風に、まちまちなことを言われることがあります。
これは、問診に頼っているからなのです。
お医者さんは数分間、患者さんの話の断片だけを聴いて「だぶん、これだな」とあたりを付けて、診断を下し、それに基づいたお薬を出しているに過ぎないのです。
患者さんが、とても話が上手で必要な情報だけをまとめて話してくれれば良いのですが、すべての患者さんにそれを求めるのは酷な話です。
光トポグラフィーや脳画像SPECTにより、診断の正確性は上がっていきます。

例えば身体であれば、物質ですから目で見ることができますので、レントゲンやMRIにより目視で確認できますが、精神の問題や心の動きは目視ではわかりませんので、誤診が多くて当たり前なのです。
そもそも「うつ病をはじめとしたほとんどの精神的な障害は原因が特定されていないため、原因によってうつ病を分類したり定義したりすることは現時点では困難である」とされています。


結論

このように診断自体の正確性が曖昧なのですから、病名に振り回されないように気を付けましょう。診断名を貰ったときに、あまり真剣に真に受ける必要はないのです。
「なるほど、そういう傾向性があるのかもね」くらいの受け止め方で十分です。


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