システムズ・アプローチ(家族療法)
おススメ度:★★★☆☆
相互作用を見る家族療法
システムズ・アプローチは、何か問題が起こった時にその人、個人の問題として見るのではなく、その人を取り巻く環境や相互作用も含めて見て行く心理療法のひとつです。
家族療法の場などでは多用されますが、それ以外のあらゆる相互作用の考えられるシステムが働いている場面では有効に機能します。
企業や社会システム、サークルなどの場でも相互作用はありますし、個人内のシステムもパターン化されています。
例えば、家族の中にうつ病の人がいたとします。
その時に、問題を抱えるその個人を「問題を抱えた人」と見るのではなく、家族間の相互作用パターンも含めて総合的に見て行きます。
その心理的困難を抱えた本人が変わる努力をしなくても、周りからの関わり合いが変われば、その個人も変化することは十分に考えられます。
会社や企業でも同じです。
Aという社長が運営していた時は上手く行かなかったとして、Bという爽やかで人格者の社長に交代したら、社員の全員がやる気を出して生き生きと働くようになり、売り上げも上がる、ということも考えられるのです。社員の問題ではなく、社員を統率するリーダーシップの問題とも言えます。
このように、個人内のシステムや個人間の相互作用パターンも含めてシステムとして見て行くアプローチが、「システムズアプローチ」なのです。
歴史のある家族療法
家族療法は1950年代のアメリカで生まれた比較的歴史のある心理療法です。
家族カウンセリング、家族セラピーとも呼ばれています。家族療法の基本的な考えと特徴は、家族をひとつの「システム」と捉えているところです。家族一人ひとりの構成員がシステムとして互いに影響を与えていると考えます。
例えば家族の一人が鬱病やパニック障害などの心の病気になったときに、あるいは引きこもりや不登校になった時に、他の心理療法では解決すべき問題点は、症状を抱える本人の心にあると考えるのに対し、家族療法やシステムズ・アプローチでは「家族システムの問題」と捉え、家族全体を治療対象と見なします。症状を抱えるクライエントをIP(Identified Patient)と呼び、その本人だけにアプローチするのではなく、家族全体の関わり合いにアプローチします。
症状を抱える特定の個人に問題があるとする考え方を直接因果律と言います。しかし家族というのは互いに影響し合い生活しているため、システムが有効に働いていないのであれば、そのシステムを変化させて貰うように働きかけます。このような考え方を循環的因果律と言います。
原因を追及し、家族の構成員の特定の誰かを悪者にすることはなく、相互作用として働いている関係性やシステムを変えるために、家族の一人ひとりに変化して貰えるように働きかけます。
全ての家族構成員が少しずつ変化して頂くのが望ましいのですが、家族構成員の一人がカウンセリングを受けることでも変化が起こる場合があります。
例えば子供が不登校や引きこもり、家庭内暴力などの何らかの社会的な不適応状態にある場合に、母親(あるいは父親)がカウンセリングを受けることで改善していくことも良くあることです。反対に子供がカウンセリングを受けることによって、親のうつ状態が軽減されることもあります。夫婦の場合も同じで妻の心配性が改善すると、夫のギャンブル依存が改善することもあります。
互いに影響し合いながら生活している家族の構成員の行動や言動が悪循環を起こしている場合は、そのシステムの中に心理カウンセラーが入ることだけでもシステムパターンが必ず変化します。
もし、お子さんが不登校やひきこもりでカウンセリングを受けたがらない場合は、お父さん、お母さんがカウンセリングを受けに来てください。
システムズ・アプローチ
家族療法のひとつにシステムズ・アプローチという考え方があります。システムズ・アプローチはもともとはシステム理論や経営工学などから発展してきたもので、家族という枠組みにとらわれず、企業や医療機関、教育機関など、様々な組織においてより良いシステム(人間関係)を構築する場合に用いられてきました。家族療法でも家族をシステムと捉えますのでシステムズ・アプローチの考え方を取り入れて発展し、教育や福祉の分野でも使われています。
システムズ・アプローチの施術者はシステム・セラピストと呼ばれます。
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