こんにちは、心理カウンセラーの石原です。
これは…数年前のこと
ある母親は、こんな記事を偶然に見つけました。「夜回り先生」の記事です。
「リストカットを繰り返す子どもたち」というお話でした。
でもリストカットのことを、その母親はあまり知りませんでした。
子どももいましたが、自分の子どもや仕事柄でも…そのような事に直面したことがなかったのです。
リストカットとは、刃物で自分の手首を切ることです。
夜回り先生は「リストカットは生きたいという心の叫びです。子どもたちは、腕を切ることで死への衝動を抑え込み、なんとか生きようとしているのです。」と言います。
夜回り先生…水谷修先生には、毎日たくさんの相談メールが届いていたそうです。
そのほとんどが、リストカットや薬物、自殺願望など、助けを求める内容です。
その中で…福島県の小学校4年生の男の子の記事が紹介されていたのを、その母親は忘れられません。
男の子からのメールは「ぼく死のうと思う。でも最後に先生と話したい」という内容でした。リストカットの相談は、9割以上が女の子なのだそうですが…男の子の場合は、相当危ないところまできていることが多い、と水谷先生はすぐ行動を起こします。
「連絡待ってるよ。先生ついてるぞ。」と電話番号を書いてメールすると、折り返し電話がきました。
男の子の家は、経済的にも破綻状態で家庭はめちゃくちゃ。洗濯もろくにしてもらえないので、汚い格好で学校へ行きます。クラスメイトからは「臭い、臭い」といじめられ、そんな中でリストカットを始めたそうです。その日、担任の先生からも「おまえが汚い格好をしているからだ」と言われ、死ぬことを決意したというのです。
水谷先生が
「今は死ぬな。だれか回りに、『この人なら信じてもいいな』という大人がいるか」
とたずねると、「校長先生」という返事が返ってきました。
去年来たばかりの先生なのですが、廊下で会ったりすると「いい子だね」と頭をなでてくれる優しい先生だというのです。
「わかった。明日の朝、校長先生のところにカミソリを持っていって、校長先生の前でリストカットしな。そのかわり、自分の心のつらさを全部校長先生に話してごらん。」
翌朝、連絡を待っていた水谷先生に、泣いている男の子から電話がはいりました。
「先生、先生!」
「どうした?」
「校長先生に話してカミソリを見せたら、『つらかったんだね』と抱きしめてくれた。校長先生、ぼくのために泣いてくれた」
男の子は救われました。
母親は…涙が溢れてました。
もし自分の息子がリストカットをするのを見たら、「つらかったんだね」と言って抱きしめてあげることが…できるだろうか?
いやぁ…水谷先生が一番やってはいけないと言っていることをしてしまうのではないか?
「何をしてるの!!」と大声で叫んで、カミソリを取り上げてしまうだろう…。
そして、夜回り先生や、この校長先生のような人が…日本にたくさんいることに感謝し、その人たちに「ありがとう」と心の中でつぶやきました。
そうつぶやいたお母さんとは、数年前の石原さわこ…という人でした。